愛は私を救う!

語彙力のないおたくのブログ

焼け野原を、駆け抜けろ(吸血ウイルスVからの生存 感想)

こんにちは!!
心の余裕がないとオタ活が滾りませんね、ユウカです。
早く自由になりたい………スーツ以外の私服を着て外に出たい…………

 


今回はひつじぐもさんから発売されている「吸血ウイルスVからの生存」というシチュエーションCDについて書いてみたいと思います。

フォロワーさんと私の計2人でやいのやいの騒ぎ立てていたこのCDシリーズ、めちゃくちゃ皆に聞いて欲しいんですが誰にも聞いて欲しくないです(絶大な矛盾)

 

要するに
「焼け野原でサバイバルをする覚悟が、君にはあるか」
そういうことです。

 

 

軽くあらすじ、というか前提を踏まえておきます。

『果たしてあなたは彼の真実にたどり着くことができるだろうか?

これは、あなた自身が物語の主人公の女性となり吸血ウイルスVに侵されていく現実を生き抜く全4巻の体験型謎解き音声です。音声ドラマを聴いて、ある視点から語られる物語の真相や不審な行動の謎を推理します。どれも1つの物語として完結していますが、Vol.1から順番に聴くことで、時系列順にお楽しみいただけます。』(公式サイトから引用)

 

吸血ウイルスVのルール
①感染すれば吸血してしまう
②太陽の下には出られない
(公式Twitterの画像から引用)

 


まあざっくり言うと、
「ある日突然感染すると不老の吸血鬼になってしまう”吸血ウイルスV”が日本で大流行!貴女(ヒロイン)は生き残ることができるのか!?そして貴女に関わるイケメン4人の謎とは………?」
という話です。


ちなみに本編の内容に即して言い換えると、
「ウイルスVの発生により激変した日本社会。何もかもが信じられないこの世界で果たして貴女(ヒロイン)は幸せになれるのか?そして貴女の人生を変える4人の男たちの真実とは。絶望の世界で貴女の選択はきっと…」
といったところでしょうか。

 

だいたい同じことを言ってるはずなのに随分と雰囲気が変わりますね。つまりそういうことです(どういうことなの)

 

以下、あんまりネタバレのない各巻感想です。

 



Vol.1ツカサ編 〜クモの幸福〜

吸血ウイルスVからの生存 Vol.1 ツカサ編 ~クモの幸福~

吸血ウイルスVからの生存 Vol.1 ツカサ編 ~クモの幸福~

 

幼馴染のお兄ちゃん(cv.鈴木裕斗)です。
白状すると私は彼…というかcv鈴木裕斗氏のお兄ちゃん目当てにこのシリーズに手を出しました。

ツカサくんは優しくて良いお兄ちゃんですね、トータルすると1番ヒロインとお似合いの子では?
言動のいちいちに育ちの良さが滲み出ていらっしゃる……ヒロインへの理解が深いのも高ポイントです。

 

 


Vol.2ヤクモ編〜ユートピアの条件〜

優しい年上の男の人(cv.平川大輔)です。

優しくて穏やかそうに見えて意外と熱い男でした。ヒロインを常に助けようとしてくれる、『正義の人』だなぁと思います。

ただ、恋愛というか保護者だなぁという感はあるよね………うん…
ヤクモさんには是非とも幸せになって欲しいです。マジで。

 

 


Vol.3ケンゴ編〜メアリーの部屋〜

吸血ウイルスVからの生存 Vol.3 ケンゴ編 ~メアリーの部屋~

吸血ウイルスVからの生存 Vol.3 ケンゴ編 ~メアリーの部屋~

 

穏やかな青年(cv.山中千尋)です。
お願いだからヤクモ編まで聞いてからケンゴ編を聞いて欲しい。そうしないと色々と崩壊するので。
何故かってしょっぱなからヤクモ編のネタバレが入るから。

彼はね〜〜〜〜シンプルにヤバイです。あとは全部ネタバレになるので後々語りますね………

 

 


Vol.4タクミ編〜水槽の脳〜

吸血ウイルスVからの生存 Vol.4 タクミ編 ~水槽を泳ぐ脳~

吸血ウイルスVからの生存 Vol.4 タクミ編 ~水槽を泳ぐ脳~

 

茶店のマスター(cv.新垣樽助)です。
性格はヤクモとツカサのハイブリッドみたいなとこありますよね。
私もタクミさんの淹れたコーヒーが飲みたいです。

恋愛面で言えば割とヒロインが押せ押せなのが印象的でした。

この巻を聞いたあとにCDジャケ裏を是非見返して欲しいです。


ネタバレなしで感想書こうと思うとぺらっぺらですね………

 

 


………………そろそろネタバレ込みで話してもいい?いいよね???

話します

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


はい

 

 

とりあえずこのCDシリーズについて一言感想を言うとするならば
「どうしてこれを世に出そうと思ったのか?」
以外にないです。
この世界に絶望しかないじゃないか。
だってこの物語は、始まる前から終わっているのだから。

 

タクミ編の時間軸を発売時に合わせたのってこれわざとでしょ????
私たちがヒロインへ感情移入したり真剣に考察したりしていたのを最後の最後に突きつけて我々を虚無の世界へ落とし込むための布石な訳ですよ。

 

これはヒロインの物語であって『このCDを聞いている私』の物語ではない。
我々が与えられた役割は物語を俯瞰で眺めて楽しむ”感染者”に過ぎないのです。

シリーズ完走して、公式の推奨するままに考察したりフォロワーと語り合ったりしてたら最後にこんな爆弾放り込まれて、チベットスナギツネ顔にならない人間いるの???

 

これ、ノンフィクション感動ストーリーとか24時間テレビとか好きな人がまかり間違って聞いてしまったら絶対再起不能になるでしょ
他人の人生を娯楽として消費している社会に対する皮肉がキツイ。エッジが効き過ぎてまるで日本刀のようだ 

 

個別に思ったことを書いていく。

ツカサくんはめちゃくちゃ優しいし理想のお兄ちゃんだけど!ヒロインがあの結末に至る呪い(君は生きて)をかけたのも他ならぬツカサくん!!

ツカサ編のテーマは「囚人達のジレンマ」ってことで。
これは小枠ではヒロインとツカサの相手を信じる/信じないのゲームになります。このゲームを繰り返すうちに、ヒロインとツカサはお互いに信じあう(パレート最適へ移行)ことができたけどちょっと遅すぎたのでツカサは正義を気取った暴漢に襲われて亡くなりました。
もう一つ、実はこの作品全体を通して感染者と非感染者の信じる/信じないゲームが展開されています。こちらのゲームは最後(タクミ編)に至るまで解決ができず、結果非感染者は感染者に「感染者の(命や娯楽の)ために生かされる存在」として定義付けられてしまいました。

 

 


ヤクモさんはひたすらに心が痛くなるストーリーだし彼がユートピアから離脱したその後が描かれないのがシンプルに恐怖。彼はきっと自分の信念上自ら感染することはないだろうし、タクミ編の非感染者側に影も形も出てこないってことはきっとそういうこと
普通に生きてればタクミ編の時でもアラフィフくらいでしょ?
あとこの巻からしれっとタイトル詐欺が始まります。

生存できてねーじゃん!!

しかもヒロイン自分から感染したじゃん!!!

 

ヤクモさんのテーマはユートピア
ユートピアはトマス・モアの著作の中で「現実には決して存在しない理想的な社会」として描かれたものであり、その実は「非人間的な管理社会の色彩が強く、決して自由主義的・牧歌的な理想郷(アルカディア)ではない」(Wikipediaより引用)
後半の内容を読むとケンゴ編でああなってしまった(後述)のもなるべくしてなったというべきなのか……
そして、そもそもトマスの「ユートピア」の主軸は現代批判だったということは、やはりこの吸血生存という作品もまた現代社会を批判していると捉えるのが順当なのではないでしょうか。

ヤクモが語った「感染者にも非感染者のような暮らしを」という理想がタクミ編でああいった形で回収(実現)されていたのには頭を抱えました。うん…そうだね……確かに理想通りの感染者の暮らしだ…………

 

 


ケンゴは…………うん……
お前が全ての元凶だよ総統閣下!!!!!!!!!!!!!!!!!
ヒロインが幸せになれない運命を決定付けた男です。
計算高いし目的のためなら手段は選ばない。不治の病にかかっていた、という同情の余地はあるけどそれで許されるかと言えばNOでしょうね。
どこからが嘘でどこからが真なのかは本人しかわからないですが、嘘から出た真の恋だと思います。

しかし総統は(恐らく)愛を知らないのに執着心がえげつない。愛なんて錯覚でどうとでもなるんですよって思い知るよね……
ただ、ヒロインと別離してもヒロインとの約束を守ろうと総統であり続けるところとか、タクミ編でずっと探してたヒロインの居場所を知っても幸せそうなヒロインを見て(かどうかはわからないけど)追手をわざと仕向けなかったところとか、健気で可愛いところもあるんですよね……憎めない……
だけど大体お前のせい

 

多分ヒロインに一番近いのはケンゴです。

 

総統閣下は元々権力欲とかはないんだろうなと思います。総統になったのも半分はヒロインとの約束のためで半分は自己保身(ルールを破って感染した事に対する追求をさせないため)なんじゃないかなぁと

 

ケンゴ編のテーマは「メアリーの部屋」
ありとあらゆる情報を収集し、綿密な計画のもと感染者となったケンゴは、非感染者の採血を担当しながらもいままで頑なに人間の血を拒否し続け、ついにケンゴの血を吸ったヒロインは、果たして何を思ったのか。それは本人たちのみぞ知る

 

 

 

タクミはさぁ………タクミさん貴方どこまで知ってるの??返答によっては評価の359°回転も辞さないよ???
この解答を投げっぱなしにする公式は鬼畜か何かか??????
因みにフォロワーさんと私の見解は「ヒロインの境遇以外は全部知っている」です。
あんた鬼か!!!!

 

この世はでっかい焼け野原
そうさ今こそアドベンチャー(ただし全ては感染者の監視下で)

 

オタクにこの内容を聞かせようとした企画がよく開発会議を通ったなぁと感心しきりです。

 

タクミ編のテーマは「水槽の脳」
もう少し有名な例で言うなら「胡蝶の夢」が近いでしょうか。デカルトの「我思う、故に我あり」に、
もちろん俺らは抵抗するで?
      拳      で
と言わんばかりに真っ向から喧嘩を売りに行くスタイル。果たして今思考している自分は本当に自分なのか?真実の自分は他に存在しているのではないか?ということ。

タクミ編での使われ方としては
今自分の見ている真実=非感染者のアジトである地下での幸せ
は果たして本当なのか?=感染者により監視され、飼い殺しにされた中での幸せ
という感じになります。

こっっっっわ

 

どうでもいいですがタクミ編で
感染者は太陽光を浴びたら死んでしまうから昼は外に出られない→昼は太陽光を浴びないように保護服を着ればいいじゃない!
というまさかの力技的解決法を押し出してきたのには笑った。力isパワー
いや、それでいいんかい!

 

(ここから初稿追加分)

ところで、ケンゴ編冒頭で、「血液はポイントと交換、ポイントは労働によって手に入る」というユートピアルールがしれっと提示されていますが、血液しか栄養として摂取できない感染者は非感染者に比べて命の選択幅が狭まっています。(食料を自家生産できない)
感染者はこのことによって、感染前より社会(ユートピア)に依存せざるを得ない状況になるわけです。だから「超管理社会」という意味のユートピアは言い得て妙ですよね。


ルールを守れば制約の中で「自由」は担保されるという状態で人はどう動くか。
答えは「自分からルールを守り、お互いに監視し合う」です。これを自発的服従と言います。こうなってしまえばまずクーデターが起こらないので管理者にはとっても都合がいい。

 

ところでこの話を聞いてCD完走した人は思うところがあるのではないでしょうか?
そう、タクミです。

タクミが全てを知っていたと仮定すると、タクミ(および地下の非感染者)と感染者の関係はそのまま感染者のヒエラルキーに投影できます。
つまり自らを支配階級だと認識している感染者も、実のところは総統らの被支配者でしかないという事です。
こういう話、現実でもよく聞きますよね。

ただし、「感染者の食料(血液)はポイントと交換」ということは、そのまま食料は全てユートピア上層部によって管理されていることを意味するので、抵抗できなさでは現実よりユートピアの方が上です。


ヤクモ編後〜ケンゴ編にかけて感染者になった人々は、ほとんどが不老(=幸福)を求めて自ら感染したと考えられますが、今までの社会で人間のまま生きていくのと、ユートピアで感染者として生きていくのではどちらがより自由でより幸福なんでしょうか。
そして一体どれだけの感染者がそのことに気づいたのでしょうか。


ついでに言うと、タクミ編で既に感染者による非感染者狩りが活発化していると言われているので、そろそろユートピアの食料問題が台頭してくるのではないでしょうか?
元々このユートピアロールモデルには無理があって、非感染者に食料を提供させてポイントが貯まったら感染者になる権利を与えているので、感染者が不老(もしかして不死?)という特徴を踏まえると「生産者(非感染者)は減り続け、消費者(感染者)は増え続ける」という状態に陥ります。
少子高齢化で年金制度が崩壊しかけてるのと同じ理屈です。

そうしていざ血液が足りなくなった時に何が起こるのか。それは弱者の切り捨てです。ただ、総統は頭がよろしいのでじわじわと締め上げていく方針をとるでしょうね。そしてそれまで何も考えずにただ安穏と上に従っていた感染者達は気付いた頃には抵抗する術も、それどころか抵抗を考える頭も奪われており、無抵抗のままただ搾取される。という結末が待ち構えています。

 

フォロワーさんが仰っていた「ケンゴは感染者を憎んでいるのでは?」という仮説と合わせるとユートピアの運営はケンゴによる壮大な(しかもかなり周到な)復讐劇なのかもしれません。

 

 

なんとなく最後締まらなかったけどひとまずこんな感じで。気が向いたらまた続き書きます。考えたことの半分も書けてないので。

それではまた次の記事で!!